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  1. 海外研修報告
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タイで勝負する日本企業(山村直緖)

ビジネス企画学科4年 山村直緖

1.はじめに

 私は将来、途上国のインフラを整備するなど、「国際協力」というフィールドで働きたいと考えている。海外で働くというイメージをより明確にしたいと思い、本研修への参加を決意した。

 そこで、事前学習では特にタイのインフラについて調べた。国の経済成長には、インフラの整備が必要不可欠である。タイは急速な経済成長を遂げたが、現在は低迷しており、中進国と呼ばれている。そのような状態に陥ったのは、インフラの整備状態とも関係しているのではないかと考えた。

 本研修では、低迷している経済状況の中で、日本企業がどのようにビジネスを行い、成果を上げているのかを知ることを目的とする。さらに、「物流」「銀行」「損保」といった異業種の企業を訪問することで、タイの方々に受け入れられる日本のサービスの特徴について発見する。

2.荷主における海外戦略

 日本企業の国際化の現状については、急速に国際化が進んでおり、海外に現地法人を有する企業も増加している。海外現地法人の地域分布は、従来の欧米からアジア(なかでも中国)のウエイトが高まっている。消費市場のニーズを探り、短いリードタイムで市場に投入するうえで、消費市場に近い場所に生産拠点を立地させることは有利である。しかし、調達活動についてはすべてをアジア地域内で調達することは難しい現状がある。そのため、日本企業の国際的な調達・生産・販売活動の広がりによって、原材料や部品、製品の物流をグローバルなレベルで管理する「グローバルロジスティクス・マネジメント」1)が重要になると考える。日本企業は、現地で需要が高まっているものについては積極的に現地生産を行い、調達から販売まで一貫して行うことが望ましい。そうすることで、輸送コストと国際障壁に係るコストを抑えることができる。

 また、輸送だけでなく、物流センターでの保管、在庫管理等の様々なサービスをグローバル規模で展開することで、企業の求める物流サービスを提供することができ、企業の海外進出を促すことができると考える。

3.物流事業者の海外戦略

 物流事業を展開するためには、物流を行うためのインフラが必要だ。日本企業がますますアジアに進出している今、ビジネスを成功させるためにはアジアの交通事情に注目する必要があると考える。

 タイは自動車に偏重した交通インフラであり、渋滞の問題が深刻化しているほどである(写真1)。物流事業も主に道路で行われてきた。しかし現在、首都バンコクで東南アジア最大の鉄道ターミナルが建設されており、各地に延びる高速鉄道と都市鉄道を集約し、投資や観光を分散しようという計画がある。タイでの人やモノの流れが道路以外でも頻繁になると思われる。

 さらにタイは、「東部経済回廊(ECC)」というタイ東部での経済開発の政策2)に力を入れている。ECCとは、バンコク東部のチョンブリー、ラヨーン、チャチェンサオの3県にまたがり、電気自動車やプラグインハイブリッド車といった次世代自動車をはじめ、医療、航空、ロボットなどのハイテク産業の特定業種の投資促進と陸海空インフラを一体的に開発する政策である。ECC地域では、日本企業の工場が多く集まっており、日本人街も形成されている。同地域と首都の2国際空港をつなぐ路線の計画も進んでおり、物流事業の展開の仕方も試されると思う。道路から鉄道、空路の開発が進められれば、それに伴って物流の方法も変えていかなければならない。言い換えれば、いち早く対応できれば大きな成果を上げ利益を獲得することができる。物流事業を展開していく国でのインフラ整備とその動向に注目することが重要になると考える。

写真1 バンコク市内の渋滞の様子

4.現地で活躍されている方々に聞きたいこと

 事前活動として、現地で活躍されている方々にお聞きしたいことについて、下記の質問を事前に設定した。

1)メガバンクとの競争を避け、地銀としてどのように企業を支援しているのか。(大垣共立銀行)

2)タイ人のお金に対する管理意識はどうか。(バンコク銀行)

3)今後のタイの経済成長を実現していくための「農業分野の効率化」実現への具体策はあるか。(JETROバンコク事務所)

4)今後タイの保険市場は伸びていくか。(あいおいニッセイ同和損保)

5)タイで高速鉄道が整備されることによって、今後の物流はどうしていくか。(セイノー・サハ・ロジスティクス)

上記の丸括弧内の企業は5.検証で具体的に記述する。

5.検証(現地活動)

5.1 大垣共立銀行バンコク駐在員事務所

 大垣共立銀行は岐阜に本社を構える地方銀行である。「脱・銀行」を掲げ、手のひらソリューション、スマホ払い、アバターの活用など特徴的なサービスを提供している。

 担当の臼井所長からは、興味深いお話をたくさんお聞きすることができた。とくに面白かったのが、「日本人のDNAの強さ」というお話だ。

 ビジネスを成立させるためには、最後は人間と人間のやりとりが肝心になるという。相手にどのように売り込むか、「セールス」というものはいつになってもなくならない。大事なチャンスのときに、そこで折れずに最後までやり抜いてビジネスに結び付けられるかが重要だ。日本人にはその強さがあり、世界に通用すると臼井所長はおっしゃった。

 また、日本人であるというだけで、「世界からの信頼」が得られるらしい。パスポートさえあれば世界のほとんどどこへでも行ける。その特権を利用して、若いうちから世界の舞台へ挑戦し、世界から日本を見るという力を養いたい。臼井所長も、日本人であることで地元の銀行から信頼されており、融資などの協力を得られるそうだ。地元の方とうまく信頼関係を築きながら、ITを使ったビジネスマッチングや、タイ経験者への永住提案など、新しいサービスを次々と生み出している。

 大垣共立銀行では、地元の企業に寄り添った支援を行い、銀行の枠を超えたサービスを展開することで、メガバンクとの差別化を図っていることが分かった。

5.2 バンコク銀行

 バンコク銀行は、国内に1166支店、タイ国外にも32拠点を持つ国内最大の銀行である。「日系企業部」が設置されており、現地の日本企業への支援を行っている。

 バンコク銀行のサービスは、海外現地法人の資金ニーズに際して、親会社と提携している金融機関の信用状に基づいて融資を実行するというものである。このスキームのメリットは、①バンコク銀行から円滑なバーツ建ての資金調達が可能 ②タイ国内で得たバーツを返済に充てられることで為替リスクを回避できる ③新しい会社でも金融機関からの信用状により、円滑な資金調達が可能といったことが挙げられる。

 日本企業がタイへ進出する際に失敗する要因として、「資金繰り及び財務経理の管理、為替リスクに対する備え」が十分でないことがある。バンコク銀行は、資金協力という側面で日本企業の進出を積極的に支援している。

 また、タイの人たちの貯蔵意識は低く、今後は積立貯金の金利を上げるなどして、預金を促していくそうだ。

5.3 JETROバンコク事務所

 JETROは、日本産農林水産物や食品の輸出、日本企業の海外展開の支援を行う機関である。諸外国との貿易拡大および経済協力を促進することで、日本の経済や社会のさらなる発展を目指している3)

 タイでは地域格差が大きく、富裕層やアッパーミドルはバンコク及び近郊に集中している。日本企業はこれらの層をターゲットにしていることが分かった。タイでは、安定した電気供給があること、外国投資優遇政策の存在、周辺国との国境貿易が可能であるといった魅力がたくさんあり、それらが日本企業の進出を後押ししている。

 日本とタイの人口構成は似ており、タイも高齢化社会に突入している。その分お金を持つ層が厚くなっていくことであるから、日本企業にとってもチャンスとなる。さらに、「タイランド4.0」という政府のビジョンの実現に向け、産業の高度化・高付加価値化が今後図られる。次世代自動車やメディカル&ウェルネスツーリズムなど、日本が得意とする分野へ積極的に参入することで、タイと日本の相互的な成長が期待できると考える。

 水産業では、エビの養殖にIT技術を導入した事例があり、今後のタイの農業分野の効率化にも生かしていきたいとのことだった。技術の提供と教育を同時に行うことが必要になってくる。

5.4 あいおいニッセイ同和損保

 あいおいニッセイ同和損保では、保険会社1社、損保保険ブローカー1社の現地法人がタイ国内にて事業を運営している。2005年、トヨタ自動車およびそのサプライヤーを中心とした日本企業の保険引受をメインにスタートした。

 事業内容は、日系事業とトヨタリテール事業がある。日系事業では、日系のお客様に対して火災保険や自動車保険、海上保険などの様々な種類の保険の引き受けなどがある。トヨタリテール事業では、トヨタ自動車の方針である「バリューチェーンの構築」のため、自動車保険を活用しながらディーラーと協働で入庫誘導活動を実施する。

 タイの保険市場は、自動車保険を筆頭に損害保険、生命保険ともに右肩上がりで、今後も伸びていく。市場の大きさ自体は日本の10分の1であるにもかかわらず、会社数は日本の3倍である。会社自体の力がとても弱く、これから競争によって会社数は減っていくと考えられている。

 あいおいニッセイの現地法人は、日系ブローカーと異なり、自社系列以外の保険会社商品も取り扱っており、幅広い商品の提供を可能としている。その理由は、そもそもバンコク保険を親会社としていることと、昔からトヨタ自動車とも結びつきがあることから、日系の損保会社がタイの市場に参入する前からの流れを受け継いでいることで、実現しているということだった。

 また、タイの自動車保険は任意保険加入率が23%と非常に低い。日本人は、自動車保険を「相手に何かしてしまったときに備える」ものとして捉えているが、タイ人は「自分の車を直す」ためのものとして捉えている。まだ一人ひとりの所得が低く、対人事故へのリスク管理意識も低いようだ。このような状況では、任意保険加入率は簡単に上げられないと思った。しかし、あいおいニッセイでは、トヨタ自動車の方針である「バリューチェーンの構築」をもとに、自分自身の車を大切に使ってもらえるようにサイクルを整えている。保険契約から事故対応、修理まで一貫して行うことで、自分自身の車を管理する意識が少しずつ広がっていくことで、保険自体への加入率を上げるという試みだ。

5.5 セイノー・サハ・ロジスティクス

 セイノーホールディングス株式会社と、タイの消費財大手サハグループが提携して物流事業を展開している。倉庫業、物流加工、国内輸送などを主なサービスとして行なっている。

タイの物流インフラについては、レムチャバン港で受け取った荷物を地方へ運ぶための幹線道路が必要との意見を伺った。今後タイの鉄道の整備がきちんと進められれば、鉄道での輸送も可能になると思われる。

 倉庫内を見学したが、タイ国内で人気だという、Thai President Foods社のインスタントラーメンが、段ボールで大量に積まれていた(写真2)。倉庫内はThai President Foods社の商品が8割、そのほかはポカリスウェットやエリエール、エステー化学などの日本企業の商品が占めている4)

写真2 倉庫内見学

 Thai President Foods社の工場見学では、インスタントラーメンの加工過程を実際に見ることができた。説明は全て英語で行われたため、すべてを聞き取れたわけではないが、普段から英語の自主学習に励んでいた成果もあり、ある程度理解することができた。タイでは小麦が収穫できないため、原材料はカナダ、アメリカ、オーストラリアから輸入しているらしい。小麦が収穫できないにも関わらずインスタントラーメンが大流行していることが面白いと思った。タイ人も、給料日前などのお金がない時はインスタントラーメンに頼り、安く済ませているそうだ。試食では2種類の味を頂いた。ガパオライス味と塩漬け玉子味だ。どちらも日本人でも受け入れやすい味付けで、辛みは強かったがとても美味しかった。今後、タイから日本への輸出もあるかもしれない。

6.おわりに

 本研修を通して、海外で活躍されている日本人の方々からたくさんのお話を聞くことができた。その中で、「世界から日本を見る」という視点の大切さを知った。これからの日本を担っていくのは私たちである。日本の力を強くし、世界をけん引する存在にしていかなければならない。そのためにも私は若いうちから世界へ出ていき、様々な価値観、多様性の中で揉まれながら自分自身の考えを形成していきたい。その中で得られる経験や知識を生かし、世界で戦えるビジネスウーマンになりたいと思う。そして、最終的には途上国の貧困や格差問題に取り掛かり、持続可能な世界の構築に貢献したい。

(2018年度経営学部短期海外研修報告〔タイ〕)

参考文献

1)日本通運 グローバルロジスティクス・マネジメント https://www.nittsu.co.jp/global/

2)ひろしま産業振興機構 東部経済回廊 https://www.hiwave.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/rp-bk1710.pdf

3) JETRO ホームページ https://www.jetro.go.jp/

4)日本経済新聞 タイプレジデントフーズ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22356000X11C17A0FFE000/

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