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  1. 海外研修報告
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AIと人間が上手く共存するには(村山舞香)

経営学科3年 村山舞香

1. はじめに

 私は2年生の後期に、矢守恭子先生の情報社会論という授業を通してAI(人工知能)について次のようなことを学んだ。すなわち、社会に貢献する一要素としてAIを積極的に開発している国は日本の他にアメリカや中国であるが、日本のロボット工学は世界の中でもトップクラスに入る程に進んでいるので、日本はアメリカや中国よりも一足早くAIと人間が共存する日がやってくるだろう、ということである。

 では、タイは日本のロボット工学から何を学び、どのように活用したいと思っているのだろうか。また、どのような場所でAIが活躍でき、人間の生活がより良くなっていけるのだろうか。

 そこで本稿は上記のような視点から、実際にタイに行き自分の目で見て発見したこととともに、様々な環境や場面に応じてどのように人間とAIが共存できるかを考え、学ぶことを目的とする。

2. 荷主における海外戦略

 現在の日本企業は世界各国に進出している。地域別で見てみると、2005年以降アジアへの進出が日系進出企業全体の70.0%を占めており、2017年のデータを見ると、5万2860もの拠点がアジア各国に広がっている1)。次いで北米が全体比12.5%の9417拠点、西欧が全体比7.7%の5833拠点となっており、アジア、北米、西欧の3地域で、全体の9割を占める結果となっている。

 日系企業が海外へ進出するねらいは、「『自社の商品およびサービスを開発・販売する市場として進出する』のと、『自社の商品およびサービスの生産代替先を移転する為』」2)である。そうすることで、さらなる販売マーケットを求めて広範囲に日本の製品が広がり、我が国の経済成長にも繋がる。また、日本よりも物価が低い海外で従業員を雇うことで、低い人件費で3)会社を回すことが可能である。

3. 物流事業者の海外戦略

 タイにおいて活動している日系企業数はJETROバンコク事務所の「タイ日系企業進出動向調査2017年」によれば、合計6134社ある。これは、2014年度の前回調査時の4567社に加え、その後2017年5月までに登記された1124社、さらに各種資料から得た日系企業情報443社の合計である4)。東南アジアには南北経済回廊、東西経済回廊、南部経済回廊と大きく3つの経済回廊と呼ばれる新幹線道路網が整備されつつある。これらの経済回廊が完成すれば、いっそうの経済活性化をメコン河流域諸国にもたらすと期待されている。

 タイには、スワンナプール、ドンムアン、ウタパオの3つの国際空港もある。こうした輸送ルートが確立していれば、タイ国内で製造した日系企業の製品(商品)を広範囲で輸送できる。また東南アジア諸国連合(ASEAN)に含まれている国同士の関税が撤廃されれば、物流の地域はより広範囲に広がり、海外に進出している日系企業の商品が拠点地のみではなく、様々な国へ広まると考えられる。よってその日系企業の商品を日本の物流会社のトラックが輸送することで、トラックを広範囲で走らせれば走らせるほど、その物流会社の会社名も広く知られる。このように日本の商品を日本の物流会社が輸送することでお互いwin-winの関係が築ける。

 年々海外に進出する日系企業は増加傾向にある。よって増加すればするほど物流という仕事は欠かせず必要となる。物流事業者が海外を拠点に置くことで日本の商品は海外に広まる。


4. 現地で活躍されている方々に聞きたいこと

 事前活動として、現地で活躍されている方々に聞きたいことについて下記の質問を事前に設定した。

① 50年前と現在では物価が10倍にも上がったが、最低賃金はどんな変化が見られか。                                   

② インターネットバンクにより、いつ、どこでもお金を下ろしたり振り込んだりできるが、犯罪の対策は何かあるか。

③ 女性の社会進出が日本よりも進んでいるが、会社は女性も働きやすくするためにどのような取り組みをしているのか。

④ タイで初の走行距離連動型自動車保険の認可取得を行ったが、そのうえで苦労したことや気を付けたことは何か。

⑤ 日本で販売されているポカリスエットは、風邪をひいた時に飲んでほしいというキャッチコピーで人々に認知されているが、タイではどんなキャッチコピーで販売されているのか。

⑥ 他国や同業者との差別化を図るために、何に務めているのか。

写真1  スワンナプーム国際空港に到着

5. 検証(現地活動)

5.1大垣共立銀行バンコク駐在員事務所

 駐在員事務所とは事業そのものを行わないため売り上げに繋がる活動はできない。よって一般的には、市場調査や情報収集活動などに限定される。そのため我々はタイの市場について伺った。

 現在のタイは富裕層が作った町であり、いまだに身分制度にもとづく階級社会の名残が残っている。50年前と現在を比較すると物価は10倍に上昇し、最低賃金も10,000バーツ(日本円で35,000円)にまで上昇した。このように時代の流れとともに物価や最低賃金も変化しつつある。しかしタイには日本のように相続税や贈与税というものが存在しないため、先祖がお金持ちであると子孫も自動的にお金持ちになる。またタイ企業の現状は、同じ会社に勤めていても親のコネで入社してきたお金持ちと、下層から努力して這い上がってきた人が同等の立場で見られることはない。このような格差社会が現在も続いている。この話をして下さった臼井所長は、能力がある人が上に行く、そんな社会を作りたいとおっしゃっていた(写真2)。

 現在の日本は携帯電話中心の文化であるため、人々の会話が減少している。だが、市場調査や情報収集は人々の何気ない会話から得られるため、そこから生まれるビジネスチャンスはたくさん存在する。ITやAIは確かにとても利便性に優れているが、ビジネスとは人と人とでしか成り立つものではない。会社とはお客様がいないことには成り立たない。よってセールスを極めた人間こそが会社から求められ、辞めさせられることはない。そのためにも突進力や突破力があり最後にゴールを決められる、そんな人間こそが社会で生き残ることができる。

写真2 バンコク駐在員事務所

5.2 バンコック銀行

 トヨタ自動車や日野自動車は50年以上も前からタイに進出している。このような日系企業や、個人でタイに滞在している日本人の人々が安心して自分の口座を作ることができるように、バンコック銀行には日本人スタッフや日本語が話せるタイ人のスタッフが勤めている。

 現在の日本ではキャッシュレス化が進んでいるが、タイでは月収15,000バーツ以上(日本円で52,500円以上)の人しかキャッシュカードを作ることができないため、この条件を満たす人が少ない。またタイの人々はまだ貯蓄できるほど余裕がないため、給料日に働いて稼いだお金が全て生活費などでなくなってしまうことが多く、日本のように年金制度なども充実していない。

 世界的に見ても銀行がインターネットを活用した、いわゆるインターネットバンキングにより、いつどこでもお金を下ろしたり振り込んだりすることがとても便利な社会になったが、その反面インターネットを通じてのパスワード等の流失による犯罪などは日本と同じようにタイでも起こる。タイの町中で多く見かけたATMでは日本のようにパスワードが周りの人に見えないような作りにはなっておらず、丸見えであった。そのためタイの人々は自分の手で隠しながらパスワードを打ち、犯罪に巻き込まれないように対策している。このようにインターネットバンキングによりいつ、どこでもお金を下ろしたり振り込んだりできるようになったが、犯罪対策はまだまだ改善の余地がありそうだ。

5.3 JETROタイ事務所

 JETROとは日本の貿易の発展・拡大のために活動している機関である5)。また海外企業に日本のマーケット情報を提供したり日本に誘致したり、いわゆる日本へ投資してもらうための機関でもある。よって海外企業が日本に入ってくることにより、日本国内で多くの人が働けるようになるため、日本にとって雇用の拡大にも繋がる。そしてさらにその会社が取り扱う商品が流通することで、日本の消費が増加するため安定する。消費が活発になれば日本経済の発展にも繋がる(写真3)。

 ジェトロ・バンコクで取り組んでいることの一例として、エビの養殖へのITの投入が挙げられる。水温の温度をITにより調節し、どの水温の温度が大量のエビを繁殖させることができるのかなどの研究を行った。

 タイの女性は日本の女性よりも働く面で社会進出している。その背景にはタイの法律が関係している。タイ人の労働者は産休が90日間、病欠が30日間取れるため実質4ヶ月間ほど休暇を取ることが可能である。一方、日本では産休のために取れる休暇期間は3ヶ月ほどであり、病欠においては会社と相談する形で期間を設けられる。日本の会社は何日間の休暇を取れるというよりも、働けるようになったら復帰するため休暇を取る側としては、なるべく早く復帰しなければならないという焦りが生じる。この時点で日本はまだまだ女性が働きやすい環境であるとは言えない。このようにタイでは女性の社会進出が日本よりも進んでいる。その背景には、女性も働きやすくするために、会社の意識改革のみに留まらず、国全体として取り組みをしている。

写真3 ジェトロ・バンコク

5.4あいおいニッセイ同和損保

 あいおいニッセイ同和損保では保険会社1社、損害保険ブローカー1社の現地法人がタイ国内にて事業を運営している6)。保険代理店と損害保険ブローカーの違いは、保険代理店は保険会社の代わりに保険を売るが、損害保険ブローカーとは社員がお客様に適している保険を見つけ、それらを進めて契約を交わし売る。

 2015年におけるタイの車両登録台数をみると1500万台の自家所有車、2000万台のオートバイがある。また車種別車両登録比率をみると2015年には自動車の登録が40%にのぼり、2005年のそれと比較してオートバイから自動車へと比重がシフトしている7)。にもかかわらず強制保険(日本でいう自賠責保険)加入率は78%、任意保険加入率は23%と極めて低い。タイでは任意保険は自動車を購入した1年目は無料で付いてくるが、2年目からは自分で払わないといけなくなるため、加入率が減少する。タイの死亡事故の割合は日本に比べると4倍も高く、プロの運転手であるはずのツアーやバスなどの死亡事故が多い。WHO世界保健機関の調べによるとタイは、人口10万人当たりの交通事故死亡率は第3位である。こうした事故が多いからこそ、自動車を運転する人には保険にしっかり入るべきだ。

 あいおいニッセイ同和損保はタイで初の走行距離連動型自動車保険の認可取得を行った(写真4)。走行距離の日本のデータや欧米のデータを金融庁に提出したり、車の正確な走行距離を測りデータが取れるようにしたり、正しく安全に運転している人には保険料を安くしたりするなど、苦労し工夫を重ね得た取得である。

写真4 あいおいニッセイ同和損保

5.5 セイノー・サハ・ロジスティクス

 Thai President Foodの工場見学により、タイで製造されているインスタントヌードルの販売や輸出までの流れについて学んだ。

 タイのインスタントヌードルはビニールに入ったラーメンのみが販売されていて、カップに入ったラーメンは全てフィンランドやアメリカへ輸出される。また日本のように汁はなく、作り方はまるでインスタント焼きそばのようだ。タイでは物流業者のトラックは重量を基準に運ぶため、ビニール包装されたインスタントラーメンよりもカップのそれの方が重量は軽いので、輸出商品がカップの場合、同じ1tであってもビニール包装よりも1度に大量の商品を運ぶことになる。インスタントラーメンの製造者にはメリットだが、物流業者にとってはデメリットである。

 倉庫内を見学すると日本でもよく目にする、ポカリスエットやエリエールの商品が多く保管されていた(写真5)。タイでは日本のように地震が起きることはないため、タイ国内に運ばれる荷物が高く積まれていた。日本で販売されているポカリスエットは、風邪をひいた時に飲んでほしいというキャッチコピーで人々に認知されているが、タイではまだまだポカリスエットという商品自体の認知度が低い。また、ポカリスエット1本350mlを20バーツ(日本円だと70円)で販売している。この値段はタイの人々からすると、富裕層の人にしか購入してもらえないという現状である。

 セイノーサハロジスティックスCO.,LTDは、自社の知名度を上げるためになるべく車を走らせることや、トラック1台を貸切りにして安全に輸送することに力を入れている。また他国や同業社と差別化を図るために、「会社を発展させ、社員を幸福にする」という経営理念を見つめ直し原点に戻ったり、新提案を練ったりしている。タイは自動車産業なのでASEAN各国の国境を超えるトラックを目指している。

写真5 セイノーサハロジスティックス

6.タイにおけるモータリゼーション

 タイはベトナムのようにバイクの保有率が高く、道路を見てもバイクだらけだと思っていたが、実際にタイで見てみると日本で生産されたTOYOTAやHONDAなどの車を使用している人が多数であった(写真6)。日本の車が中古車としてタイで販売されていることは事前学習により知ってはいたが、こんなにも多いことはタイに行き改めて分かった。だが、車の保有率が多い割には日本のように交通ルールが伴っておらず、車線を無視して走行している車も多く見られた。また道路に引いてあるセンターラインは全て白色であるため、追い越しが可か否かなどの決まりも、もちろん存在しない8)。そのため好き勝手走行しているのでとても危険であった。

写真6 バンコク市内の渋滞風景

7. おわりに

 現在の世界は情報化社会である。膨大な情報が日々めまぐるしく変化するなか、私たちは生きている。そんな中ITやAIなどが誕生し人間の働く役割を奪ってしまうのではないか、または逆にITやAIのおかげで人間の働く負担が軽減するのではないか、とも考えられる。実際にタイ研修を通して様々な日系企業を見学したところ、お客様と契約を交わすこと、新提案を編み出すこと、最終的に判断や決断をすることはすべて人間が行っている。よってITやAIとは、現時点では人間の手助けにすぎない。大垣共立銀行バンコック駐在員事務所の社長である臼井さんは、やり直しがきく若いうちに恐れずどんどん勇気を出して、世界に羽ばたくとともに、働くうえで疑問に思ったことはしつこく追究するべきとおっしゃっていた。私もそんな社会人になれるよう、この言葉を胸に刻み日々の生活を意義あるものにしていきたい(写真7)。

写真7 中部国際空港に到着

(2018年度経営学部短期海外研修報告〔タイ〕)

註・参考文献

1)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/8392.php(2020年1月18日最終アクセス)。日本企業の海外進出が多い国ランキング

2)同上。「生産代替先を移転する」は「生産代替先とするため」または「生産拠点を移転するため」のほうが適切ではないかと考えられるが、原文のまま引用した。

3)上記サイトを参照しているが、引用原文には「安価な労働力」の表現があるが国際的な格差・低賃金労働問題をメリットとして直接肯定する不適切な表現と考えられるため、本稿では「低い人件費で」に表現を改めた。

4)ジェトロ・バンコク事務所『「タイ日経企業進出動向調査2017年」調査結果』 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/762117c2abed4a1c/20170074_report.pdf

5) https://www.jetro.go.jp/

6)あいおいニッセイ同和損害保険㈱の研修資料

7)cmt.cross-m.asia/ja/blog/タイの車両登録台数推移(2020年1月18日最終アクセス) 原典は「タイ国家統計局Statistical yearbook Thailand (2016,2006)」

8)https://uccih.exblog.jp/20816762/ タイでの運転事情

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