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貨幣調査よもやま話⑦~ケンブリッジ大学編(櫻木晋一)

経営学部 櫻木晋一

 7回にわたって連載した最終回は、私の海外調査の原点となったケンブリッジ大学についての思い出話しです。私はウルフソン・コレッジのメンバーとして、フィッツウイリアム博物館の部局コインズ&メダルズに2001年4月から1年間在籍しました。今は亡きフィリップ・グリアソン、マーク・ブックバーンなど世界一流の研究者たちと親しく交われたことは、私の研究者生活にとって一生の宝物となりました。2000年9月の最初の訪問から20年間、毎年この博物館に行き、現在でもここのスタッフたちと共同研究ができることも大変幸せなことです。

 ケンブリッジ大学での最も印象深い経験をひとつだけ挙げれば、いつかのコレッジのフォーマルディナーに参加したことです。コレッジメンバーからの招待が必要ですが、経済学者ケインズを生んだキングス・コレッジ、故ホーキング博士もフェローだったゴンフィル&キーズ・コレッジ、英首相小ピットが卒業したペンブロック・コレッジなど、歴史的建造物の中で経験したディナーの思い出は忘れがたいものです。英語力が十分でない私にとっては、食前から食後に数時間続く英会話は辛くもあるものの貴重な経験となりました。これらのオールドコレッジと呼ばれる伝統的なコレッジは、食事だけでなくワインなども高価なものが振舞われ、話題も政治・経済・文化など様々な分野に及びハイレベルなものです。日本の事についても多くの質問を受け、自分の勉強不足を痛感しました。食事の場面は、ハリーポッターのディナーシーンを思い浮かべてもらえばよいと思います。私も黒いガウンを着用して、一段高い教員席で食事をすることができました。

 本題の博物館調査については、日本・ベトナム・朝鮮・中国(宋・明)の銭貨データベースについてすでに作成済みで、現在は中国清朝のデータベースを作成中です。これが最後の仕事と位置づけており、西洋人にできないことをやってあげているという感じで、重宝がられています。ここに勤めていた時、毎日昼休みは一階の研究室を出て、私は印象派の絵が好きなので、2階の印象派の部屋に行き、至福の時を過ごしました。自分の家に名作を飾っているのと同じことなのです。また、博物館内で開催される無料コンサート(ピアノ演奏など)も楽しみでした。

 教員生活の最後を朝日大学で過ごすことになり、学生たちに自分の経験を少しでも伝えるために活動しています。

フィッツウイリアム博物館正面玄関
(2011年の特別展はフェルメール展。4点展示されていたが入場無料)
ケム川越しに見たキングス・コレッジ(筆者撮影)
研究室の書籍やコインキャビネットに囲まれた筆者

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