経営学部 亀谷みゆき
本研究事業は日本学士院から委託を受けたもので,本学部の櫻木先生が研究代表者として統括されています。櫻木先生は経済史分野において考古資料である出土貨幣を使った研究の第一人者であり,これまでにも大英博物館、オックスフォード大学アシュモリアン博物館,ケンブリッジ大学フィッツウイリアム博物館など,ヨーロッパ各地の博物館で海外調査を行っておられます。その実績が評価され,2019年11月にパリで開催された第90回国際学士院連合総会において,櫻木先生の提案である本プロジェクトが,日本学士院と国際学士院連合による新たな事業として採択されました。
本研究の目的は三つあります。第一にヨーロッパ各国の博物館や研究所が所蔵する日本貨幣の所在確認を行い,発見した資料を精査し,貨幣一枚ごとの情報を記載したデータベースを作成することです。二つ目に,これらの資料に対し,英語や当該国の言語での解説を加え,その全容をカタログ等の冊子やWEB公開することによって,諸外国における日本貨幣資料についての理解や日本史研究の進展に寄与することを目指しています。そして第三に,作成したデータベースを総合的に比較検討することにより,在欧博物館等に所蔵されている日本貨幣の傾向を把握しますが,この考察過程においては,これまでに明らかにされていない日本貨幣史研究上における新たな発見を得られる可能性もあります。
本研究グループは各国学士院の協力を得ながら推進しますが,資料の存在が確認された博物館における実見調査については,このプロジェクトメンバーの使用共通語は英語となっています。私は英語を使っての事務局補助,翻訳などに携わっていますが,将来的には経営学部の一員として日本貨幣史も英語教育の教材として取り入れることや,日本貨幣コレクションの種類や構成から考察される,これらの貨幣が流通していた時代の西洋人や世界の多くの地域の人々が日本をどう観ていたのかという観点からの国際理解教育も可能ではないかと考えています。
「貨幣は人類共通の財であり,経済学や歴史学など諸学問の研究対象となり,多くの研究分野において重要な位置を獲得できる資料である」という櫻木先生の考えにより本プロジェクトは推進されていますが,海外に所蔵され文化財として認識されている「日本貨幣」という資料の精査・集成・公開を通じて,貨幣史・社会経済史・文化史研究などの分野の進展につながり,さらには,「貨幣学」「貨幣考古学」「貨幣史学」といった学問分野を構築するための基盤となることを期待しています。新型コロナウィルスの影響により実見調査が難しい状況であることが非常に残念ですが,一日も早く,欧州のプロジェクトメンバーと顔を合わせて調査ができ,朝日大学からその成果を発信できることを願っています。
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