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貨幣調査よもやま話➉ スウェーデン編

経営学部 櫻木晋一

ツィンベリーコレクションの展示
(現在は展示されていない)

2017年2月に私が初めてスウェーデンを訪れた時、王立貨幣博物館は首都ストックホルムの王宮近くにあったのですが、どの国も文化財行政は財政的に厳しいと見え、現在はスウェーデン国立歴史博物館の一部として近くに移転・統合されています。ここが所蔵している特筆すべき資料は、出島のオランダ商館にやって来た医師ツュンベリー(1743-1828)が持ち帰った日本貨幣のコレクションです。彼は帰国後の1779年8月に、スウェーデン王立学士院で「日本貨幣史」についての講演をおこなっています。そして、彼が持ち帰った日本貨幣43枚(中国銭6枚を含む)を図入りで紹介しながら、この講演内容をスウェーデン語の小冊子(32頁)[1]として出版したのです。この本はのちにドイツ語版とオランダ語版でも出版されており、日本の貨幣を本格的にヨーロッパに紹介した最初の文献となっています。

Fig.1 墨書大判(小冊子より) 

2025年9月の調査では、写真に写っている前回は実見できなかったツィンベリーコレクションを調査してきました。特に、写真の右上に写っている大判がずっと気になっており、初めて手に取って精査することができました。結果は、小冊子に掲載されているFig.1 のように、おもて面の上下左右に4つの桐紋が打たれていて、裏面に「後藤・花押」の墨書があり、これは贋物であると判断しました。

Fig.7 甲州一分金(小冊子より)

また、Fif.7は甲州金とよばれているものです。徳川幕府は1601年に慶長金貨(小判・一分金)を発行して全国の通貨統一を図るのですが、例外的に製造が許されていた地方金貨です。この左図は上下逆になっていますが、スケッチながら「壱分」「松木」と読め、かなり正確なスケッチです。一分は一両の四分の一、松木はこの金貨製造者の姓です。写真では上の方に、小冊子の一頁が展示されている左側にある丸い金貨2枚のうちの1枚がこれにあたります。

この博物館が所蔵している日本貨幣の正確な枚数はまだ把握できていませんが、前回の調査で146枚、今回は行方不明のものあったので、全部で180枚ほどだと思われます。現在、日本貨幣の展示コーナーがなくなっていたのは残念でした。また、藩札類も11枚所蔵されており、1770年に発行された比較的希少な山田羽書(銀壹匁)も1枚含まれています。 スウェーデンといえばノーベルを生んだ国ですが、毎年12月にはノーベル賞授賞者のことが報じられます。2025年12月には、日本人の坂口志文氏(生理学・医学賞)と北川進氏(化学賞)が栄誉あるノーベル賞を受賞されました。前回のストックホルム訪問時には行くことができなかったので、今回は30分ほどの時間を割いてノーベル賞博物館に行ってきました。日本人受賞者の中では、iPS細胞で有名な山中伸弥氏(生理学・医学賞)がもっとも人気のようで、ミュージアムショップでは彼の写真絵ハガキが販売されていました。私も研究者の端くれとして、日本も地道な基礎的研究が評価される社会であって欲しいと願っています。


[1] 小冊子の原文タイトルは、C.P.Thumberg, Inträdes-tal, om de mynt-sorter, som i alder och sednare tider blifvit slagne och varit gångbar uti kejsaredöment Japan (Stockholm: Georg Lange, 1779)

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