経営学部 櫻木晋一
2026年3月末で朝日大学を退職する私にとって、これが経営学会のホームページに対してできる最後の仕事となりました。このシリーズ最終回は、私が現在製作中の日本学士院日本古貨幣プロジェクトによる『日本古貨幣カタログ』第2巻の話しです。

調査地はフランスの首都パリです。一般観光客にはあまり知られていませんが、セーヌ川をはさんでルーブル美術館の対岸に、パリ造幣博物館があります。造幣局の創立は一千年以上前の864年と古く、今でも現役の造幣局なので、貨幣の製造過程なども見学することができます。また、ここには日本貨幣も展示されており、写真のように展示方法が工夫されているだけではなく、体験型の装置もたくさんあるので、楽しい博物館です。ルーブル美術館やオルセー美術館と違い観光客は少ないので、皆さんも一度訪れたらいかがでしょうか。
今回取り上げる日本貨幣は、第三次フランス軍事顧問団の一員として1884-1889年に来日した軍人Étienne de Villaret(1854-1931)が日本滞在中に集めたものです。彼の収集品はオペラ座近くのBibliothéque nationale de France(フランス国立図書館)に収蔵されており、私は2011年8月に最初の調査をおこないました。この時に、日本貨幣800枚ほどの基本データはほぼ作り上げていたので、ここのコレクションを完全なものにしてカタログの形で出版することを決めたのです。

一般的には、古貨幣資料は博物館に収蔵されているのですが、ここのように図書館が所蔵している場合もあるのです。従って、私にとってこれからの2年間は、パリが研究の中心地となります。写真のように、この図書館は格式のある大きな円形ドームの壁に書籍がぎっしりと配架されており、来館者がゆったりと大きなソファーに座って勉強している姿を見ると、日本の図書館とはずいぶん違う雰囲気だなと感じます。この建物内にはいくつもの研究室があり、様々な分野の研究者たちが活動しているのです。浮世絵はもっとも代表的な日本のコレクションでしょう。しかしながら、日本貨幣の専門家はいないため、私のような日本人研究者が訪れて研究の支援をすることは歓迎されるのです。日本の貨幣を研究しているからこそ、海外の研究にコミットできるのです。

2025年9月の調査では、新たに藩札類83枚が所蔵されていることを発見しました。これは黄土色の紙に一括して包まれており、東アジアで外交官として活動したVictorCollin de Plancy (1853-1922)が所有していたものであることが分かりました。また、14年前の調査では実見しなかった明治以降の近代貨幣や、通貨ではないのですが絵銭(呪具や玩具)もそれぞれ100枚程度収蔵されていることも分かり、現在これらのデータ一覧表を作っているところです。自分の足で探しに行けば成果はあるというのが、私の経験則です。
大学は研究機関であり、私は朝日大大学の看板を背負って7年間研究活動をしてきました。わずかながらも朝日大学に私の研究の足跡を残せたのではないかと思っています。日本史の研究者であっても、世界を股にかけて活動する足場を提供していただいた経営学部に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。ありがとうございました。


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