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役に立った資格取得(その2)(畦地真太郎)

(承前)

  1. 防災士(日本防災士機構)

 グズグズしている間に「藤田医科大学が全学生を防災士にする(中日新聞2023年1月3日)」というニュースが飛び込んできた。「え、それって?」という感もあるのだが、意外に多くの大学で実施されてるんだよな…。ちなみに岐阜県主催の講座に参加すると、参加費無料+登録料等8,000円で取得することができる。私が取ったときには近隣では三重県しかやってなくて、自腹(約5万円+8,000円)で講習を受け資格取得したのだが…。

 いわゆる「ちゃんと話を聴いてワークに参加していれば、誰でも取れる」資格である。内容も極めて常識的なというか、知っていて当然という範囲。ただ、その“常識”が、こういうところでまとまって防災に結びつけられないと、有機的な役立つ知識にならないというのも事実。変な話「学校教育の本質なんたるか」みたいなものを感じさせる。

 まずは配付される分厚い教科書(予習あり)。センター試験は地理+地学選択という私にとっては、情報アップデートの宝の山のような本である。次に避難所運営ゲーム(HUG)と災害図上訓練。このへんは(ゼミとかで真似事はできても)ノウハウを持ったファシリテーターがいないと難しいからなあ。講座が終了して、無事に資格取得できた暁には、自分の住んでいる町の防災体制がどうなっているか見極める目が持てるという、非常に優れたセミナーである。

 ただし、資格自体は持っているからといって、特に役に立たない。就職も有利にならない。が、授業でコミュニティや自治会の話をするときに「大規模災害が発災したら、避難所は自治会(町内会)が運営すんねんで。君らんところで準備はできとるか!?」という聞きかじりの説教はできるようになっている。したり顔で「自助・共助・互助・公助」とか言ってるのも、元を正せばこの講座からだったなあ…。

  1. 学芸員(大学での単位取得)

 学芸員となる資格を持っているからといって、博物館や美術館の学芸員になれるわけではない。とはいえ、朝日大学総合博物館もしくは瑞穂市博物館(注・両館とも架空の組織です)の館長の座を狙う野望を抱く身としては、持っていなければならない資格である。というわけで、放送大学で座学を、岐阜女子大学で館園実習を受講して取得した。

 ここで学んだのは「生涯学習の重要性」。岩永雅也先生の「現代の生涯学習」が抜群に面白かったのもさることながら、館園実習で会った人たちの真剣な受講態度から、学び続けることへの意欲の強さをビシビシ感じ取ったものである。授業の手抜きはできないなあ(してるけど)と、改めて思い知らされた経験だった。

 というわけで、私は何故か(科目等履修生だけど)岐阜女子大学に1年間学籍があり、放送大学は非常勤講師かつ学生である(こっちはよくあるケース)。なおその後、近畿大学の通信講座で「図書館司書」の単位を取ろうとして失敗したのは内緒である(教科書読むだけって、本当にキツい…)。あれ?近大にも学籍あったのか?

  1. 心理相談員、危険予知訓練トレーナー(中央労働災害防止協会)、安全衛生推進者(講習修了)

 なんとなく取ってみたかった心理相談員。このとき中災防と関わったことが、後に現場猫のポスターを研究室のドアに貼るきっかけになろうとは、夢にも思わなかった。

 高校時代に読んだ「マッハの恐怖(柳田邦夫)」から一貫して事故についての関心は持っていて、その他にも多くの事故の本、失敗学ブームのあたりのまとまった情報、「メーデー!」などのドキュメンタリー、芳賀繁先生のヒューマンエラーの本などから情報を仕入れまくって(そしてパクって授業で使い続けて)いた。

 ところが、知識を深めようと参加した「安全衛生推進者」講習で、現場では本の知識はほとんど役に立たないことを思い知らされた。講師のコンサルタントの先生が熱血!というか教科書の内容をなぞるのではなく、自分が現場で見かけた不安全行動、環境の不備を、目次に従ってガンガン教えてくださるタイプだった。「工場の床を見れば、近いうちに事故が起こるかどうか分かる」(5Sの解説)など、「ああ、学者(俺はモドキだけど)物知らずとはこのことだなあ」と痛感させられたのだ。なお、この資格(講習修了)自体は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場に就職しない限り、全く利用のしようがない。

 そこで発憤。正直、他の参加者さんと中災防には迷惑だったのではないかと思うのであるが、危険予知訓練トレーナーの講座にも参加させてもらったのであった。これは、工場や建設などの危険が大きい労務現場で、ゼロ災運動を推進するためのトレーニングで、参加者は現場の管理監督者の方々がほとんど。ああ、正直に言いましたとも。「大学教員やってます。現場経験は一切ありません」と、全ての参加者+運営者に。よく皆さん平然と仲間に入れてくださったと思うけど、一緒に規律正しい行動(椅子押し込め、ヨシ!)、本格的なKYT(危険予知訓練)、現場での事例紹介(6号館エレベーターの混雑を話したような気が…)など、一種独特の張り詰めた2日間を送らせていただいたのだった。皆さん「うちの職場は全然なってない」と言いながらも、職場の労災防止に命を賭けている気迫に当てられて、正しい「ゼロ災でいこう、ヨシ!」の指差呼称を身につけて帰ってきたのだった。

 プリンセスハオ。

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