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AI文章作成がウザい(畦地真太郎)

 昨年末ごろからChat GPTが話題になり始め、前学期末のレポート試験(1月末実施)では、既にそれを用いて作成されたのではないかという文章が提出されて頭を痛めていた。今までは、Google検索を適度に使えば、どこから盗用した文章なのかを証拠付きで提示できたので気兼ねなく「D判定(単位落ち)」をつけられたのだが(というか本来なら不正として教務学生委員会に通報しなければならないのだが)、AIの作文では、その手は通用しない。いわゆる“コピペ防止ソフト”にかけてみてもパクり元が判然としない。ただし、畦地の授業内容とは全く関係がないが、授業の各回タイトルとは関係のある文章が提出されるため、明らかに授業内容を理解しないで執筆されているのは分かる。その事実をもって「D」にするということもできるのだが、平常点を重視(60%)しているため、数点でも獲得できていると考えれば落とすことは難しい。対応に苦慮した結果、今学期からはレポートを取りやめ、論述式試験一本に統一することとした。ノート持ち込みのコンフィギュレーションも厳しくするため、前年度よりは格段に難易度の高い試験となってしまうが、「モラルハザードに対応するために規則を厳しくせざるを得ない」という世の法則に従うと致し方のないことである。S配給王として知られる「畦地の授業」なのだが、はてさてどんな結果が待ち受けていることやら。

 既にAI文章作成の使い方について基準を決めている大学もあるようだが、正直言って今のレベルであると「使うな」としか言い様がない。明らかに間違いが出力されるからだ。しかも恐ろしく間違っており、意味が通じていない。現在はMicrosoft EdgeでBing経由でChat GPT文章が手軽にできるようになったために、試しに畦地のオリジナル概念である「地尊心」について書かせてみた。

 私たちは、地域の魅力を見つけて、自分たちの住む場所に誇りを持ちたいと思っていませんか?そんな願いを叶えるために、地尊心を高めることが大切です。地尊心とは、自分の地域に対する愛着や尊敬の気持ちのことです。地尊心を高めることで、地域資源の発掘や交流人口の増大につながります。

 地域資源とは、自然や文化、歴史など、地域に特有の価値あるもののことです。地域資源を発掘することで、地域の魅力や個性を再発見し、自信や満足感を得ることができます。また、地域資源を活用して、観光や産業などに役立てることで、地域の経済や社会に貢献することができます。

 交流人口とは、他の地域から来た人や他の地域へ行った人など、地域間で移動する人々のことです。交流人口を増大させることで、地域間の情報や文化の交流が促進され、新しい発想や刺激を得ることができます。また、交流人口を増大させることで、地域の知名度や魅力が高まり、より多くの人に訪れてもらうことができます。

 私たちは、地尊心を高めることによって、自分たちの住む場所をより良くしようという意識や行動を起こすことができます。そして、その結果として、地域資源の発掘や交流人口の増大につながります。これは、自分たちだけでなく、他の人々や他の地域にもメリットがあることです。私たちは、笑顔で暮らすために、地尊心を高めることを心がけましょう。

 はい駄目、アウト。

 どこから見つけてきたのか分からないが、まず「地尊心」は「自分の地域に対する愛着や尊敬の気持ち」とは定義していない。次に「地域資源」と「交流人口」は、まあその説明でそこそこ合っているのだが、残念ながら文と文の間の「なぜ?なぜ?」がつながっていない。例えば「地域資源を発掘することで、地域の魅力や個性を再発見し、自信や満足感を得ることができます」とあるが、なぜ?いわゆる「分かってないやつが上っ面で何も考えずに書いた」だけになっている。最後の段落の「私たちは、地尊心を高めることによって、自分たちの住む場所をより良くしようという意識や行動を起こすことができます」は、ああ、ブチ切れ案件ですよ。誰がそんなことを授業中であろうが雑談だろうが一言でも言った。そんな中身のないジャーゴン使いはシビックプライドにでも任せておけや。何が「笑顔で暮らすために、地尊心を高めることを心がけましょう」だ。笑顔で暮らすために地尊心なんて妙ちきりんな概念を無理して苦労して捻り出したわけじゃねえや、ブクブクボテボテボカンボカン。ビューッChat GPTとはあわないわどっちかが消えるべきなのだわ。

 ということで試しに作った文章を読んでいるだけで狂いかけて雑音が出てしまったので、次回の定期試験からはイライラする文章を提出した学生については、それがAI文章であろうが翻訳→再翻訳文章であろうが単に文章力がないだけであろうが、遠慮なく単位を出さないことにすることとした。例年の答案で考えると、95%の学生さんは該当しないはずなのであるが。これだけ利用がお手軽な時代になると、どこまでの層が安易なことを考えてくるのか、ちょっと想像できない。そしてもしかすると超水爆戦からのナメクジ文明もありうるかもしれない、と、人工知能学会員の端くれとしては嫌な未来編を想像してしまったのであった。

【編集部注】執筆者の依頼にもとづいて本稿における「AI生成文」をコピペルナー(コピペ検出ソフト)にかけた結果、当該部分を含め本稿はコピペ率2.9%という極めて低い数値であり、著作権侵害ないことを確認しています。

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