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海外からの学び(2023年度短期海外研修〔ベトナム〕報告)

経営学部経営学科3年 MOHAMED SIDDEEK FATHIMA REENA

要旨
本研修では、ベトナムに支店を置く日系企業がどのように現地の人々に適した経営方針を策定し、従業員との関係を築いているのかを明らかにするとともに、日本中心の経営や企業展開に視野を置くのではなく、より世界的に事業展開するために、どのような工夫や姿勢をとる必要があるのかを考察し、その実態を明らかにする。

キーワード: 日本とベトナムの比較 ベトナムの特徴を生かした経営

1. はじめに
1.1 研究の背景
スリランカでは人種問題や宗教上の問題が深刻であり「冷戦状態」が続く中で、私の父は生活を守るために来日した。その時は、日本語も分からず日本に知り合いもいなかった。母国で働いても家族を守るだけの経済的な安定は困難という状況に追い込まれたため、何も分からないまま、日本に来て起業した。そのため来日当初は、日本の文化や習慣が自分たちのそれと異なり、時には自分は人に親切にしているつもりでも迷惑な行為になってしまっていた、という話を聞いた。

父がつくりあげた会社の事業をアジアやアフリカを中心に発展させて行くことが、私の夢である。本研修をとおして、企業が海外に進出する際に、成功するためにはどのような手段や方法をとっているのかを学ぶことができると考えた。

1.2 研究の目的
ベトナムは、地理的、歴史的にもスリランカと似ていて、日本とは異なる地域である。ベトナムでのビジネスにおける企業と顧客との関係性や会社と従業員のそれを研究することで、会社が行っている経営の実態と、海外進出時に行うべき経営のスタイルが明らかになる。海外に進出する際には、その国に適した経営をすることが最も重要であるため、ベトナムに事業を発展させた日本企業を訪問することで、成功裏に海外進出を果たすための手段や方法、経営戦略を明らかにする。

1.3 先行研究
財団法人海外職業訓練協会が平成20年3月に発表した「ベトナムの日系企業が直面した問題と対処事例」1)によると、ベトナム人の特徴として以下のことが挙げられている。
・従業員からの要望、間合わせにはなるべく早く回答する。
・上位者からの話は理解し行動している者が多いようである。
・一部の従業員の中には、責任が重くなることへのためらいがあり、昇進にはあまり積極的ではない 人も見られる。

CareerCross Journalのインターネット記事では駐在員と現地社員との関係について以下のように言及している。2)
・派遣員の場合は、最初から期限付きの滞在のため、それ程現地社員と親しくなろうとしませんし、現地社員のほうも短期の付き合いと割り切っている。

また、とあるインターネットのブログ3)は、シンガポール駐在員による以下のような「現地社員の特徴」が挙げられている。
・怒られるのが苦手
・ミスを認めない
・当事者意識が低い
・間食が多い
・プライベートを大切にする

このように日本から派遣された駐在員と現地社員とでは、その特質や人間関係、仕事に対する意識が大きく異なる。

2. 日本における従業員関係
日本では大企業の基幹社員(正社員)を中心に終身雇用が慣行として定着している。転職・中途入社は、ふつうの場合は不利をともなう。不況であっても、基幹社員の解雇は、よほどの企業の危機でないかぎり、基本的にはありえない。一部の職人層や一般職・補助職については短期雇用が多いといえるが、基幹的な従業員は、終身雇用が支配的である。日本では、特定職務の遂行能力をただちに期待されて入社することはない。大卒・高卒、技術職・事務員という大まかな区分はありながら、むしろ「よき従業員」たる潜在能力・人柄が期待されている。たとえ将来の企業のトップとなるような人材でも、入社当初は、平の従業員であり、したがって、企業内組合の組合員である。平の従業員が、さまざまの職務を送行しながら、下から上へ、同一企案内で地位を上昇させ、管理層へと昇っていくのが一般的な日本企業の在り方といえる。非常に有能な人材で、将来、最短距離でまちがいなく幹部に登用できる人材でも、やはりはじめは組合員である4)

このように、日本では従業員は同じ企業で働き続け、成果や結果を残せるように努力し、会社は従業員やその家族の暮らしを一生保証するような終身雇用制度がある。そのため、会社も従業員も互いにより良い関係を保とうと努力する。近年ではこのような終身雇用制度が修正されたり、実力主義や能力主義を取り入れたりする大企業もあるが、それでもなお、概して終身雇用は日本的経営の特徴といえよう。

3. ベトナムでの従業員との関係
今回の研修において、市場調査や企業見学でのレクチャーから以下のようなベトナム人の特徴を学んだ。すなわち、ベトナムでは、人前で注意されることをとても嫌う人が多い。また、一方的に自分自身を制限されたり、支配させたりすることも苦手である。そのため、経営者はベトナム人従業員一人一人に対して接し方を変えたり、納得のいかないルールを強制したりすることを避けている。

また、ベトナム人はプライベートや自由を好む傾向があるため、仕事は自分のものを終わらせることを重視し、チームプレーをあまりしない。ベトナム人は、計画性はあまりないが、目の前にある課題に対しては最善を尽くして課題解決する能力が優れている。ベトナムでは女性の社会進出がとても進んでおり、家族で仕事についている人の多くは女性である。それは、歴史上、国内外での戦争が多い国であり、男性は国を守る役目を持っていて、女性は家族や経済を安定させる役目があると考えられているからである。

このようなベトナム人の特徴や習慣、風習を経営者は理解をし、仕事を与えている。例えば、仕事中であっても仕事が終われば、スマートフォン利用しても注意をしなかったり、ミスを注意するときは個別に注意して、改善すべきところまで明確に伝えたりする努力がなされている。

ベトナムは日本とは違い、経営者も労働者も同じ立場にある。

4. 現地企業への訪問の意義
ベトナムは、長い間植民地支配されていて、近年になり10年余り経済成長し続けている発展途上国の1つである。日本と同じアジアに所属していても、日本とは全く違う文化や習慣、気候、政治体制を持っている国である。これらの違いは、海外進出する企業にとって強点でもあり、弱点になってしまうこともある。今回の研修では、ベトナムに支店を置く日本企業を訪問させていただき、企業ごとに、これらの違いである強点や弱点をどのように活用し、ベトナムで経営を成功させているのかを、現地で経営されている方や、従業員として働いている方から説明や質問を通じて学ぶことができる貴重な経験を得ることができた。

訪問の準備と目的の設定として、この学習機会を自分のものにするために、企業情報についてインターネットやホームページで調べられることは、あらかじめ調べておくことで、誰もが得られる知識とは違う、現地での学びや新たな発見を得ることができると考えた。そこで5章以下では、各社ごとの事前学習と訪問後の初見や学びを述べる。また、企業訪問で学んだベトナムの文化や習慣、歴史上のつながりなどの学びも加えて述べる。

5. 企業訪問
5.1 濃飛ベトナム・ロジスティックス本社および濃飛ベトナム・ロジスティックス保税倉庫
5.1.1 事前学習
本社(日本)は1916年8月28日に設立された。資本金は、4億9680万円で、売上高は、23,569百万円(平成24年)である。保有貨物車両は678台で、大型が326台、中型が352台である。保管スペースは、223,526㎡である。事業種目は、倉庫業、貨物利用運送事業(鉄道、海運、航空)、通関業はもちろん、自動車整備事業、不動産賃貸業、損害保険代理業など幅広い分野で事業を行っている。企業活動では、安全への取り組み、環境への取り組み、品質への取り組み、AEO制度への取り組みを行っている。5)

5.1.2 濃飛倉庫株式会社本社訪問
岐阜県にある濃飛倉庫株式会社の本社を出発前に訪問させて頂いた。

濃飛の物流基幹部門は、倉庫、陸運、通運、国際、海外、管財である。倉庫部門では、通倉庫、低温倉庫、危険品倉庫、トランクルーム、書類保管庫など、お客様の商品特性や入出庫状況を深く理解して最適な保管環境を提供している。国際物流では、激動する世界経済の動きに対して世界各地に広がっている同社の国際物流ネットワークを最大限に活用し、発着地での倉庫保管、陸上輸送等の最適な一貫輸送を実現している。

陸運部門では、商品の特性やリードタイム、希望納期などお客様の輸送ニーズにあわせて最適な輸送ルート・車両を選択して輸送している。また、貨物追跡システムにより、お預かりした商品の配達状況を一覧照会できるサービスも提供している。

通運部門では、鉄道輸送は一度に大量の輸送が可能であり、長距離輸送になるほど輸送コストが削減される。また、線路上を走行するため交通渋滞の心配もなく安全・確実な計画輸送を実現している。

この事業で一番大変なことは、国内外に法律によって制限されている物や、害虫を持ち込んだり、海外に送り込んだりすることはもちろん、税関に申請した物以外に何ひとつ商品に入り混じってはいけないということである。そのため、強度なセキュリティーをはじめ、国や顧客から信頼を得られるように、少しでも不審に思える物を発見したときや、一つたりとも物がなくなったり、違うものがついていたりした場合は、税関に報告をしている。このように税関が管理しやすいように保税蔵置場で商品を管理している。この施設では、外国貨物の積み卸し、運搬、蔵置などを行っている。

また、税関の役割には、3つある。1つ目は、適正かつ公平な関税等の徴収である。税関で徴収する関税、消費税等は日本の国税収入の約1割を占めている。積極的な情報提供を通じて、適正な申告が可能となる納税環境を整備するとともに、積極的な諸施策を講じている。

2つ目は、安全・安心な社会の実現である。薬物・銃器をはじめテロ関連物品や知的財産侵害物品等の社会の安全安心を脅かす物品等の密輸出入を水際で取り締るため、内外関係機関との連携や情報交換を積極的に行い、近年の密輸事犯の大口化や多様化に対応した取締体制等の整備に取り組んでいる。

3つ目は、貿易の円滑化である。貿易の秩序維持と健全な発展を目指すに当たり、適正な関税を確保しつつ、簡便な手続と円滑な処理を実現する必要がある。税関では、手続やシステム運用等の改善を行い利用者の利便性の向上等を通じた貿易の円滑化の取り組みを進めている。

5.1.3 現地で学んだこと
(1)歴史的視点
歴史的視点からベトナムと日本を主に経済貿易関連を比較する。ベトナムでは16世紀に、ホイアンの日本人町が栄える。この時日本では、戦国時代の真っ只中から豊臣政権による統一、そして徳川幕府体制に移行した時代である。中部にあるホイアンの街並みは、ユネスコの世界文化遺産として登録されている。当時街に住んでいた日本人が架けたと伝えられる“日本人橋”が今もある。当時の日本人、日本の朱印船貿易時代を偲ぶことができる場所である。

そして、1905年から独立運動家ファン・ボイ・チャウがドンズー(東遊)運動を開始した。1940年9月に日本軍の北部仏印進駐し、1940年から1945年の5年間の間、日本とフランスがベトナムを統治していた。1973年9月21日に日本と外交関係樹立した。1976年頃からベトナムという国が成立してくるようになる。1986年に第6回党大会においてドイモイ(刷新)政策が打ち出される。1992年11月に日本の対越援助が再開された。

(2)経済的視点
日本とベトナムの経済的側面を比較すると、表1のとおりである。

 ベトナム日本
①主要産業 第一次産業 第二次産業 第三次産業  11.88% 38.26% 41.33%  1.0% 26.1% 72.9%
②GDP約4,138億米ドル約4兆2,375億米ドル
③一人当たりGDP約4,110米ドル約33,854米ドル
④経済成長率約8.02%約1,047%
⑤物価上昇率約3.15%約2.50%
⑥失業率約2.32%約2.60%
⑦貿易額 輸出額   (2)輸入額  約3,719億ドル 約3,607憶ドル  約7,494憶ドル 約9,018億ドル
⑧主要貿易品目 輸出       (2)輸入  繊維・縫製品、携帯電話・同部品等 機械設備・同部品、電子機器、繊維等  自動車、半導体等電子部品、プラスチック等 原油、石炭、医薬品、半導体等電子部品等
⑨貿易相手国 輸出         (2)輸入  米国、中国、韓国、日本、香港     中国、韓国、日本、台湾、米国  中国、米国韓国、タイ、シンガポール、ベトナム等 中国、米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦、インドネシア、ベトナム等
表1 日本とベトナムの経済比較

①主要産業:日本は第二次産業と第三次産業をメインにしているが、ベトナムでは、まだ第一次産業の比重が10%を超えている。
⑦貿易額:日本は輸入がメインになっているが、ベトナムは、材料を輸入し、それを加工して製品化し輸出しているため、国としては黒字を保っている。
⑧主要貿易品目:日本の輸入品目に原油や石炭などの化石燃料が挙げられるが、ベトナムではエネルギー資源があり、化石燃料を輸入していないため、製品の製造や輸送に必要な化石燃料の輸入費用がかからない。しかし、地球温暖化問題などの配慮が必要であることが課題である。
⑨貿易相手国:日本は先進国、発展途上国の両方からの輸出入があるが、ベトナムは先進国からの輸出入が多い。その理由として、ベトナムは先進国から材料を輸入し、ベトナム国内で加工して、再び先進国へ輸出しているからである。ベトナムの貿易相手国はここ数年あまり変化していない。

(3)日越文化外交関連
1992年にベトナム日本商工会議所が発足される。1993年にJETRO事務所を開設し、1995年にJICA事務所開設した。2008年に、国際交流基金事務所を開設し、ダナン日本商工会が発足した。

在留ベトナム邦人数21,819人で、在留邦人数全世界では、130万8,515人である。在日ベトナム人数は476,346人で、2位である(2022年時点)。

日本に在留するベトナム国籍者と、ベトナムに在留する日本国籍者を比較すると約21倍も在日ベトナム人数が多いことがわかる。このことから、ベトナムよりも、日本で働くことを望むベトナム人が多いことがわかる。日本の少子高齢化社会にとっては、海外からの低い賃金で雇用することができる労働者がいることが利点である。しかし、ベトナムにとっては、若者が日本のような先進国に流れてしまうと、ベトナムの経済成長にはつながないことが考えられる。

5.2 ベトナム三菱商事
5.2.1 事前学習
三菱商事株式会社は、1954年7月1日に創立され、資本金 約2044億4666万円である。産業DX部門や次世代エネルギー部門、天然ガスグループ、自動車・モビリティグループ、食品産業グループ、複合都市開発グループなど幅広い分野で活躍している。企業理念は、「三菱商事は、創業以来の社是である『三綱領』を拠り所に、公正で健全な事業活動を推進しています。」である6)

5.2.2 現地で学んだこと
ベトナムは、人口が1億人、且つ中央年齢32.5歳で、日本の48.4歳と比較して、かなり若い国である。しかし、ベトナムでも少子化が始まっている。首都ハノイは人口約8百万人であるのに対してホーチミン市は約9百万人と、ハノイよりもホーチミン市の方が人口も経済規模も大きい。政治体制は社会主義共和国である。ハノイにある三菱商事の支店は政治との関わりが多い。外交関係では、共産国のみならず全方位外交で、日本及び米国他にも緊密な関係を持っている。しかし。1000年以上侵略されていた歴史上の背景があり、隣接する中国とは国民感情で拘泥がある。

経済では1980年代、中越戦争、カンボジア・ベトナム戦争後の国際的な孤立と経済的困窮にした。しかし、海外企業からの投資や積極的なASEANへの加盟によりベトナムと世界とのやりとりが始まり、WTOへの加盟により経済が豊かになるなど国際交流に参加することで、1995年以降、約四半世紀でGDP総額は16倍、一人当たりGDPは11倍と劇的な急速な経済成長を実現した。所得動向は、20年間で中間層(5,000~34,999ドル/世帯)の割合で11.7%から51.9%に、41百万人に急増した。過去10年間で平均月収は3倍に急増している。

ベトナムは、伝統小売が7割で、そこにインターネットとスマートフォンが加わっているため、小さなお店やストリートストアでも商品がインターネットを通じて購入できるところが特徴的である。そのため、日本よりも遅く、急成長したベトナムには、インフラは日本と同じであっても、インターネットやスマートフォンなどのIT技術が加わって、成長しているため日本とは全く違う経済成長の在り方がある。

インフラの基本はバイクで、人口1万人当たり約7,000台以上の普及率で、一人一台のため国全体を通じてモビリティがある状態である。バイクが国民になじみすぎてしまい、車よりもバイクが便利であり、車が国全体で400万台しかないのに対して、バイクは約17倍の7,000万台である。

また、ベトナムでは車のことをHONDAと言うほど、80%以上がHONDA車である。そのため、ベトナム三菱商事は、自動車製造販売業よりも、他の不動産開発業やアパレル小売業、石炭火力発電業などに力を入れている。三菱商事のベトナムにおける活動状況は、拠点をハノイに本社、ホーチミンに支店と2か所を持ち、社員数は約70名である。事業投資先は14社、社員数は13,000人超で、駐在員・出向者・トレイニーは30名強である。ベトナム中間層の拡大とともに、ここ数年でBtoCビジネスが活況を呈している(自動車、ユニクロ、住宅)。

不動産開発のGrand Park Projectでは、ベトナム最大手デベロッパーVinhomesがホーチミンで開発中の大規模都市開発事業に野村不動産と共同で参画している。また、2021年3月に「MC Urban Development Vietnam」を設立し、今後は同社を中心にベトナム国内の不動産開発に取り組みを進めている。

アパレル小売のUNIQLO VIETNAMは、2018年に設立し、株式構成はファーストリテイリング(75%)、三菱商事(25%)である。2019年12月にホーチミンに1号店を開店した。ホーチミンに7店舗、ハノイ4店舗、ハイフォンに1店舗、計12店を展開中である。2021年11月にベトナム全土を対象にEコマースを開始している。

石炭火力発電のVung Ang 2では、ベトナム国内の逼迫する電力需要の改善に貢献すべき、発電容量1,200MW(60MW×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設・所有・操業し25年間にわたりベトナム国営電力公社(EVN)に対して売電する発電事業を、パートナーの韓国電力他と共に推進中である。

自動車製造販売のMitsubishi Motor Vietnamは、1994年に設立し、現在の株式構成は、三菱自動車工業(41.2%)、三菱商事(41.2)、Trancimexco(17.6%)の3社である。ビンズン省に組立工場があり、インドネシア・タイから完成車輸入と併せ、2021年度は29,068台を販売し、シェアは約10%である。

このように三菱商事は、経済成長により顧客の購買力が増大した結果、今まで手に入れることが不可能なものが手に入るようになったことで、良いものを欲しがる傾向や自分たちの国の成長や豊かさを国民が感じているという国民心理を生かし、ニーズに合わせて、高層住宅を建築して販売したり、品質の高い素材で衣服を販売したりする事業を行っている。しかし、その時その時生まれる需要に対しての供給を行っているため、コンベンショナルのビジネスモデルをとっているが、スマートフォンやインターネットが当たり前になっている中、ビジネスの展開が難しいという現状がある。

また、三菱商事は、環境問題にも積極的に取り組んでいる。温室効果ガスを2030年に半分にし、2050年にはゼロにする。そのために2兆の資金を使うことをもうすでに掲げており、ENECOを5000憶で買収し、すべてのビジネスにおいてECOを求めている。このように発展途上国であるベトナムで今までの先進国の成長と同様に環境問題を引き起こしてしまうのではなく、企業が責任を持ち限りある資源を大切にすることを三菱商事は、意識しているという特徴もある。

5.2.3 ベトナムの課題
ベトナムの課題として、ASEANは1つのマーケットになっていて、ASEANの中での輸出入は税金がかからないため、わざわざベトナムで物を作らなくても良くなってしまい、自動車や電気、重化学工業などは、なかなか育たないという課題がある。

また、ベトナム人は真面目で、手先が器用で、安い労働力なので、それを目がけた企業が集まってしまい、経済成長している。例えば、GARAXYの携帯電話の部品は中国や日本からベトナムに輸入し組み立てている。そのような状況が続き経済成長しているベトナムは、ベトナム自身の産業の厚みが薄いことが大きな課題である。

5.3 日本ノート株式会社
5.3.1 事前学習
日本ノート株式会社は、1919年3月に創業され、1999年3月に設立された。代表取締役社長は、角坂靖夫で資本金1億円の会社である。従業員は、2021年時点で220名、主な業務内容は、学用・日用・ビジネス用紙製品・文具の製造・販売、印刷物・出版物・紙製品等の海外生産・輸入販売である。事業拠点は、東京と大阪にあり、生産拠点は、岡山とベトナムにある。

日本ノートは2019年1月に、キョクトウ(KYOKUTO)とアピカ(APICA)の2つのブランドを統合した新しい会社である。両ブランドともに100年に亘る歴史が有り、特に学習帳・ノートは安心してお客様にお使いいただけるよう『紙の素材と品質』にこだわり提供を続けている。紙は、後世に記録を残すことができる『文化』そのものだと考えられている。現代社会において学習や仕事、生活における記録媒体は、パソコンやスマートフォンなどが活用されるようになった現在、デジタルの利便性と「紙に書く」ことを組み合わせて、学習効果向上や仕事の効率化、さらには豊かな表現などを得られると考えられている。循環経済が叫ばれている中、日本ノートも積極的にリサイクル素材を採用している7)

5.3.2 現地で学んだこと
日本ノートベトナムは、2021年に設立され、学習帳製造・販売を主に行っていて、糸綴じ仕様が採用されている。ステーショナリーカンパニーに、日本ノートが属している。日本向けの製造がメインである。従業員は30名で、4人が駐在員であり、社長・生産・生産管理・品質管理という役職にあり、ベトナムで活躍されている。

工場面積は3,024㎡で、ヌンチャク工業団地でレンタル工場を賃借して、製造を行っている。最新の設備や機械を導入し、生産供給体制の拡大と納期の迅速化、製造コストの削減、品質の向上に取り組んでいる。

日本ノートがベトナムで製造している主な理由は、日本で製造する賃金や家賃が高くなるためである。そのため、日本から間違った材料を輸入してしまったり、製造した商品に変更が出たりすると、日本に輸出して材料を戻すよりも、ベトナムで廃棄したほうがコストを抑えることができる。また、製造の過程で発生した不良品や切れ端なども、ベトナムで買い取ってくれるため、製品にはならない物の保管や管理が重要である。

工場内は、材料の設置から製品化まですべて機械が導入されていて、ベトナム人の従業員は監視や製品の移動、品質管理などを行っていた。工場見学では、お客様からの信頼をなくさないための品質管理の仕方に驚いた。品質管理には従業員だけでなく、派遣社員やアルバイト、パートの労働者を雇用し1枚1枚隅々まで何十人で品質チェックを行っていた。

日本以外での販売を考えると、日本の紙や材料は品質が高く、費用が高いため、紙を変えたり、糸綴じ仕様ではなくホチキスで綴じたりするなど、材料にも製造方法にも変化が必要である。コストの問題だけでなく、その国の文化に適したノートを製造しなければいけないという課題もある。例えば、ベトナムではノートを無駄なく使うために、ホチキスで綴じられているノートのホチキスを外し、紙全体に無駄なく使いきれるようになっている。また、ベトナムのノートは日本のノートよりもかなり小さいA5で罫線は升目調を使用している南部と日本と同じB5で、横線を使用している北部で別れている。このように、それぞれの国の習慣や文化をむやみに変えてしまうと親しんでもらえないという課題が起きてしまうので、いろいろな種類やサイズに対応できる機会を導入しなければならないことが今後の課題である。

ベトナムで、事業を行うことの問題点として、行政関係の書類や行動がとても難しいという点がある。日本のようにルールがしっかりとしているわけではなく、担当者によって異なったり、地域によって異なったりするという。そのため、納期に間に合わないなどのトラブルに巻き込まれることもあり、法律をいろんな形で解釈することができるという問題が企業にとって大きいことがわかる。

5.4 OKBコンサルティングベトナム
5.4.1 事前学習
OKBコンサルティングベトナムは、ベトナムの市場調査、現地拠点の設立や運営、自社製品やサービスの海外展開、現地企業への出資やM&Aプロセスなどをサポートする総合コンサルティングファームである。

特徴としては、4つある。1つ目は、ベトナムにおける地方銀行初のコンサルティングファームであり、OKB大垣共立銀行が100%出資している。

2つ目は、ベトナム全域をカバーしている。北部の首都ハノイ市と南部の商都ホーチミン市の2大都市に拠点があり、ベトナム全域をカバーしている。

3つ目は、OKBグループのベトナムでの沿革である。2012年3月に全国の地方銀行で初めてホーチミン市に駐在員事務所を開設し、2017年4月に、ハノイ市にコンサルティング現地法人「OKB Consulting Vietnam Co., Ltd.」を設立した。2020年3月にホーチミン駐在員事務所を発展的に閉鎖し、「OKB Consulting Vietnam Co., Ltd.ホーチミン支社」を開設した。

4つ目は、サポート体制である。ベトナムビジネスの経験が豊富でベトナム語を解する日本人、日本語・英語とも堪能なベトナム人スタッフが対応する。10年以上のベトナムビジネスにおけるノウハウでお客様をサポートしている。サポート内容は、進出サポート・現地拠点設立や運営サポート・ベトナムでの事業展開サポートなどがある。進出サポートでは、自社商品や事業についての現地調査や現地の工業団地・オフィスの選定についてのアドバイスや現地視察のアテンドを行っている。現地拠点設立・運営サポートでは、事業計画の策定や現地商習慣、法規定などについてのアドバイス、法人設立などの各手続き(申請書作成・翻訳など)のサポートを行っている。ベトナムでの事業展開サポートでは、販路開拓や仕入先の拡充、製造委託先調査のサポート、現地企業への出資やM&Aプロセスのサポートなど様々なサポートを行っている8)

5.4.2 現地で学んだこと
ベトナムは、GDPが成長し続けている国で、コロナ禍前のGDP成長率は5~7%で、2021年はコロナ禍のロックダウンもあり経済活動が低迷したが、コロナ禍においてもGDPをプラスで維持できたのはベトナムだけである。2022年以降は経済活動再開により回復した。

さらに、平均年齢が32歳と若く、現在は人口増加が続いており、2023年に1億人を突破した。しかし、今後は少子化の時代が始まりつつある。現在は、働くことができる若い国である。若く成長期であるベトナムにはたくさんのビジネスチャンスがある。日本からの投資は高水準で、累計投資額は世界3位、累計投資件数は世界2位である。進出企業数は右肩上がりで、ベトナム全土で約2,000社以上の日系企業が進出しており、大手企業の進出は一巡し、進出の裾野は中型・中小企業へ広がっているという特徴がある。

ベトナムへの進出企業の動向はこれまで、北部に大企業が中心で、南部は中小企業で、南北ともに製造業の進出がメインであった。北部に大企業が集中し、南部に中小企業が集中している傾向には国民の気質上の理由がある。それは、北部の人々は他のものを批判したり、受け入れたりしない傾向があり、中小企業の進出が難しかった。そのため、積極的に新たなものを受け入れる南部に中小企業が進出したと考えられる。現在は、巨大な工場をつくるために、土地の値段が安い場所で工場をつくり製造を行うため、北部では製造業が中心である。南部では各種業種が進出し、内需志向型企業を中心に商品・サービスの販売を行っている。ハノイ近郊は、大規模製造業及びサプライヤーがFDIをけん引してきた。今後もますます裾野が広がりつつある。

ホーチミン近郊は、内需志向型企業のアプローチが増えている。ベトナムにおける最大の消費マーケットは南部のホーチミン市近郊で外食・サービス・小売業などの内需志向型企業進出の多くは南部から進出する傾向があり、その後、北部へ進出するケースが多い。流通業のコンビニエンスストアは南部のみだが、イオン、ユニクロはいち早く北部への多店舗展開を実施してきた。外食・サービス業は、ベトナム料理が充実していたり、家賃が高く苦戦し南部だけの進出になったり、南部からスタートし、北部に進出することもあるという業種ごとに進出の仕方に特徴がある。

6. おわり
本研修では、ベトナムの文化の違いや習慣、気候の違いを業種ごとでどのように企業が経営戦略を立てているのか、ビジネスモデルを変えているのかを学ぶことができた。市場調査や企業訪問を通じて、新たなビジネスアイデアを考えることができた。

また、会社の成長には従業員の活躍とても大切である。従業員が働くことが苦痛に思ってしまわないように、日本のように縛り付けた雇用形態ではなく、ベトナムのように従業員の自由や思いが通じるような経営方針をとることで、真面目で責任感があり、将来を予測して行動する日本人は、積極的になって、会社の成長に貢献してくれると考えられる。

このように、日本では当たり前だったことを見直し、新たな変化やアイデアを積極的に取り入れようとする考えが得られた。本研修を通じて、自分自身が成長した点である。

今後は、本研修で成長した積極的に行動する力と何事にも挑戦して改善点を見つけ、改善できるところを改善し、変化や周りとの違いを恐れないように、自分の依頼や夢に向かって取り組んでいきたい。

謝辞
 本研修に、ご協力頂いた濃飛倉庫運輸株式会社様をはじめ企業の皆様、そしてこのような素晴らしい学びの機会を与えてくださった宮田淳朝日大学理事長、大友克之学長、教授の皆様には心から感謝申し上げます。

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