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  1. 海外研修報告
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タイの社会情勢と日系企業の在り方(安里彩奈)

ビジネス企画学科4年 安里彩奈

1. はじめに

 これから日本は人口が減少していく中で、アジアを中心に続々と国外へ進出している企業が増えている。その中で就職していく私は少しでも海外の現情や日本との違い、異文化を理解することで、今までとは違う考えや創造性に触れ合うことができる良い機会なのではないかと考え、今回の研修に応募した。

 今まで海外に行ったことがなく、今回の研修では初めて見ることや驚くこと、感じることがたくさんあり、異文化に触れあい、海外の経済状況を学ぶことができた。

2. 荷主における海外戦略

 現在、海外に進出している日本企業の拠点数は7万1820(内、タイは1783)もある(平成28年10月1日時点)。その中で荷主が自社の製品を現地にどう売り出すか、また生産拠点を日本ではなく現地に置くメリットやデメリットはいったい何なのかといった、海外拠点戦略について自分の考えを述べる。なお、「海外拠点戦略」を「国内だけではなく海外にも視野を向け、ビジネス展開していくこと」と定義する。

 例として大塚製薬が自社製品のポカリスエットを将来タイで生産し、販売を強化するという事案をみよう。これまでタイでは代理店や関係者を通じ、日系スーパーなどを中心にポカリスエットを販売してきた。こうした委託販売に代わって、生産及び販売拠点をタイにおくメリットとして、次の3点があげられる。

 ①現地の消費者ニーズの変化などに対してすぐに対応できる。②現地で生産することで、輸出コストが抑えられる。③タイに工場を設けることで周辺国への輸出拠点にする。特に③については、次の海外進出に向けての重要な役割を担っている。

 しかし、タイで工場を設ければ新たな費用がかかる。デメリットをあげるとしたらこの1点だ。さらには、現地の人に受け入れられないという心配もある。そこは企業側がしっかりマーケティング調査をし、事前に計画を練るだけではなく現地での販売後についても対応する必要がある。その点、大塚製薬は今後自前でマーケティングを手掛け、タイで年間5000万本売れるようになれば工場を設け、周辺国への輸出拠点にすることも検討している。

 以上のことから、大塚製薬は海外に拠点をおくメリットやデメリットをしっかり把握し、十分に発揮できるような海外拠点戦略をとっていることがわかる。

3. 物流事業者の海外戦略

 物流業者の海外拠点戦略について、製造業(メーカー)と物流業者との関係性の視点から考えを述べる。

 “海外便り2016年”〔注:事前研修資料〕の記事によれば、「セイノーホールディングス株式会社は、タイの総合消費財メーカー最大手サハ・グループの自社物流を担当するグループ会社に出資する形で、タイへの進出を果たし」た。物流業者であるセイノーとメーカーであるサハ・グループが手を組むことによって生じるメリットは何か。物流業者とメーカー側の2つの視点からみよう。

 はじめに物流業者側(セイノー)は、メーカー(サハ・グループ)の製品を取り扱い輸送サービスすることで、セイノーがもつ幹線網や支店間数などを活かしたきめ細かい物流サービスを、タイ国内で広めることができる。すなわち自社がもつ経営資源の強みを進出国にアピールできる。

 次にメーカー側(サハ・グループ)は、共同で手掛けることによりタイ国内ではまだ事例のない混載輸送を浸透させられれば、サハ・グループの強みとなり競合他社との差別化ができる。これは海外戦略の特徴である差別化を追求するタイプである。海外戦略(グローバル戦略)はその競争上の独自のポジションを最大限に発揮できるような、グローバルな展開をすることだ。

 物流業者と現地メーカー側の両者に共通するメリットは、互いに組むことによって進出国(=受入国)に対して自社のアピールができることだ。そして物流業者は輸送ルートを確立し、広範囲で製品を輸送でき、これから進出する日系企業を誘致できれば更なるチャンスが生まれる。

 以上のことから、物流業者が海外拠点戦略をとる際はメーカー側の存在は大きく、同じくメーカー側も物流業者の存在は大きい。両者とも自社の強みを進出国(=受入国)へアピールできるパートナーを見つける事ができるかどうかが重要になってくる。

4. 現地で活躍されている方々に聞きたいこと

 本研修の事前活動として、現地で活躍されている方々に聞きたいことについて下記の質問を設定した。

① 人材育成のやりかたは日本とどうちがうのか

② タイに拠点を置いているからこそのメリット

③ 日本ではおこなっていないサービス

④ 今後人口減少していく中での対策

5. 検証(現地活動)

5.1 JETROタイ事務所

 JETROは海外ネットワークを活用したサービスメニューを取りそろえている。例えば、海外のインターンに派遣する(パイプ役)、海外展開する企業を支援するなどであり、ジェトロ・バンコク事務所では日・タイの間における貿易関係促進を目的として活動している。

 タイは日本と強い結びつきがあり、親日的である。その為日本食レストランが大変多く、2018年6月の時点でバンコクに1718、地方に1286(合計3004)もの店舗数がある。しかし近年では日本食レストランが出店しすぎて競争が激しくなっているのが現状だ。タイでは地域格差が激しく、富裕層やアッパーミドルなどがバンコク近郊に集中している。日本製品は性能は良いが値段が高めであるため、富裕層やアッパーミドルをターゲットとする日系企業が多い。その情報を提供するのもジェトロの役目である。

 次々と海外企業に進出してもらい経済を活性化してほしいというのがタイの方針であり、その役割を担って進出する日系企業のサポート、パイプ役になるのがジェトロの活動目的である。

5.2 大垣共立銀行バンコク駐在員事務所

 大垣共立銀行は1896年設立、岐阜県大垣市に本社をおく地方銀行である。同行には全国初や独自のサービスが多く、海外駐在員事務所のうち一つがタイ・バンコクにある。

 同事務所はタイに進出する日系企業の融資業務や、バンコック銀行と提携して進出企業のサポートを行っている。その他にもこれから新会社を立ち上げ、コンサルティング業務も行う予定である。また、フリーペーパーを作り、そこに様々な日系企業の情報などを収集し掲載して企業同士を結び付けるマッチングをし、そこから生まれる相乗効果をねらっている。タイはまだ成長過程の国であるため助けが必要であり、大垣共立銀行の役割はタイという国を発展させ盛り上げていくことであり、それは同時にタイへ進出する日系企業の役割でもある。

 大垣共立銀行は地方銀行なのでその分地元に貢献したい思いがあり、その思いが今後の新しいビジネスに繋るといえる。

写真 1 大垣共立銀行バンコク駐在員事務所

5.3 バンコック銀行

 バンコック銀行は1944年に設立されたタイの銀行である。支店数はタイ国内で1666に上り、タイ国内銀行では資産規模1位を誇る。バンコック銀行では海外現地法人の資金ニーズに際して、親会社取引金融機関の保証に融資するスキームを取っており、親会社を通すことで創業間もない企業でも親会社の信用力で円滑な資金調達が可能となる。そして日本の提携金融機関(OKB)からバンコック銀行にバーツ建て信用状を発行し、現地法人はバーツで資金調達をすることができ、為替リスクを回避できるメリットがある。このようなサービスでバンコック銀行はタイに進出する日系企業をサポートしている。

写真 2 バンコック銀行

5.4 あいおいニッセイ同和損保タイ

 あいおいニッセイ同和損保では保険会社1社、損害保険ブローカー1社の現地法人がタイ国内にて事業運営している。

 保険代理店と損害保険ブローカーの違いは、代理店は保険会社から委託されているのに対し、保険ブローカーはお客様から委託を受け保険会社を紹介している。今回訪ねたバンコクチャヨラでは日本人5名、タイ人35名の従業員がおり、タイ人のうち男性は5名のみで、ほとんどが女性である。このことからタイでは女性の進出が多いことが分かる。

 タイの自動車保険事情は自賠責保険加入率が日本では100%に対しタイでは78%、任意保険に至っては日本が78%、タイは23%と低いのが特徴である。タイでは過失割合がその場で決まることが多く、相手側がその場にある現金をもらい、足りない分を保険会社が負う。もし相手側が無保険の場合はその場で現金を回収して解決するケースもあり、日本ではまずありえない光景である。

5.5 セイノー・サハ・ロジスティクス

 セイノー・サハ・ロジスティクスは2015年7月29日に会社登録され、タイのシラチャに本社と倉庫がある。倉庫業・物流加工・国内輸送等を行っており、倉庫内にはポカリスエット、エリエール、エステイ化学、キユーピーといった日本でも有名な日系企業の商品も置いてある。タイでは日本よりも地震が少ないため、倉庫内の商品を高く積み上げることができ、バーコードで商品を管理しているのでどこに何があるのかがすぐに見つけられるようになっていた。タイのインフラが整備されれば、これから新たなサービス提供が期待できる。

写真 3 倉庫内

6. タイにおけるモータリゼーション

 バンコク市内はとても交通量が多く、走っている車のほとんどが日本車だった。車の数も多いがバイクは特に多かった。バイクに乗っている人達は2人乗りがほとんどで3人乗り、4人乗りをしている人達も見かけた。日本では見かけないバイクタクシー(バイタク)も渋滞が多いタイでは需要がある。しかしバイクは危なっかしい運転をしている者が多く、しっかり周りを見て運転をしないと事故が起きそうだった。

7. おわりに

 バンコク市内では、高いビルや大きいショッピングセンターなど日本とはあまり変わらない光景も見られ、意外と土地開発なども進んでいて驚いた。しかしバンコク市内から出るとあまりビルなどもなく、差が激しいと感じ、バンコク市内に富裕層が集まっているのも納得した。

写真 4 バンコク市内風景

 今回の研修でタイという国を知ることができ、行く前と行った後の印象として文化や好む味、食生活の違いもあり、驚くことが多かった。異文化を知り、理解することで考え方や視野が一気に広がったように感じた。柔軟な考え方や考えの違った人を受け入れる事はこれから社会に出ていく中で必要な事で、今回このような経験ができたことは私にとって非常に価値のある研修だった。

(2018年度経営学部短期海外研修報告〔タイ〕)

参考文献

1) 『日経MJ』2017年8月21日付10頁、「タイで「ポカリ」拡販」、日本経済新聞社

2) バンコック銀行研修資料

3) あいおいニッセイ同和損保研修資料

4) JETROタイ事務所研修資料

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